仕事を知る
国際競争力の強化・サプライチェーン強靭化
はじめに
港湾は、我が国のあらゆる経済社会活動における物流ネットワークと、世界の物流ネットワークをつなぐ窓口となります。そのため、港湾の機能強化を行うことで、このネットワークとのつながりを強化・円滑化し、我が国の経済社会活動の発展に貢献することができます。港湾局では、具体的にはつぎのような取り組みを行っています。
国際競争力の強化のための取り組み・サプライチェーン強靱化のための取り組み
国際コンテナ戦略港湾政策
一つである
京浜港

我が国への欧州基幹航路の寄港を維持するためには、港湾の役割を上げていく必要があります。近年では、コロナ禍をきっかけとした需給逼迫の影響により発生した運航スケジュールの乱れを正常化するために寄港地の絞り込みが行われた結果、日本への寄港回数が減少する事態となりました。
我が国では、国際基幹航路等※の寄港の維持・拡大を図るため、京浜港、阪神港を「国際コンテナ戦略港湾」に選定し、ハード・ソフト一体となった施策を集中して実施しています。
寄港を維持・拡大することで企業の立地環境を向上、つまり雇用と所得の維持・創出を行い、経済・産業の国際競争力を強化することが狙いです。
※北米や欧州等とダイレクトで結ぶ長距離国際海上コンテナ航路のこと
国際バルク戦略港湾政策
日本は資源・エネルギー等のほぼ100%を海外からの輸入に依存しています。これらのばら積み(バルク)貨物を輸入する岸壁は、近隣諸国と比較して整備年が古く、水深も浅い傾向にあり、各港湾毎に中型船による非効率な海上輸送が行われています。
このため、大型船が入港できる港湾を拠点的に整備し、企業間連携による大型船を活用した共同輸送を促進することで、国全体として安定的かつ効率的な資源・エネルギー等の海上輸送網の形成を図っていきます。
国際バルク戦略港湾の選定港
釧路港

- 穀物
- 釧路港 / 鹿島港 / 名古屋港 / 水島港 / 志布志港
- 石炭
- 小名浜港 / 徳山下松港 / 宇部港
- 鉄鉱石
- 木更津港 / 水島港 / 福山港
内航フェリー・RORO船ターミナルの機能強化
1,000km以上の距離帯においては、内航フェリー・RORO船※による輸送が3割以上を占めるなど、国内の長距離輸送において重要な輸送手段となっています。また長距離の内航フェリーや RORO船による輸送台数は増加傾向であり、重要性が増しています。
しかし2024年度からのトラックドライバーの時間外労働の上限規制等により、労働力不足の問題が顕在化しているため、船舶の大型化や新規航路の開設といった取組への着手を始めています。
それに伴い港湾施設の整備を推進するとともに、情報通信技術等の活用により荷役効率化等を図る次世代高規格ユニットロードターミナルの形成に向けた取り組みを推進し、将来を見据えた内航フェリー・RORO船輸送網の更なる強化を図っていきます。
※Roll On Roll Off:ロールオンロールオフ船の略で、船内に車両が自走して乗り込むことが可能な貨物船
地域の基幹産業を支える港湾整備
海上輸送網の拠点として機能する港湾は、背後に産業集積が進み、地域の雇用と経済を支え、産業の国際競争力を向上させる重要な役割を担っています。
そこで民間投資の誘発や集積した産業の物流効率化等に資する港湾施設の整備を重点的に推進します。港湾周辺では、以下のような産業立地が進展しています。
産業立地の例
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小名浜港
最新鋭の石炭火力発電所の建設
- 投資額
- 約3,000億円
- 雇用創出
- 約2,000人
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茨城港
建機工場等の新規立地等
- 投資額
- 約3,680億円
- 雇用創出
- 約2,700人
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那覇港
大型商業施設等の新規立地
- 投資額
- 約630億円
- 雇用創出
- 約4,260人
ヒトを支援するAIターミナル
良好な労働環境と世界最高水準の生産性を確保するため、「ヒトを支援するAIターミナル」の各種取り組みの社会実装を進めています。
取り組み例
- ターミナルオペレーションの最適化
- RTG(タイヤ式門型クレーン)の遠隔操作化
- 高機能なコンテナターミナルゲートの導入
港湾技術開発制度
港湾技術開発制度は、「ヒトを支援するAIターミナル」に関する取り組みを深化させ、更なる生産性向上と労働環境改善に資する技術開発を推進するために令和5年度に新規で創設した制度です。
概要
生産性向上や労働環境改善に資する技術開発テーマを設定し、港湾のイノベーションを目指す民間企業から技術開発案件を募集した後、審査を経て当該テーマに合致する案件を採択します。採択した技術の開発を推進し、当該技術の製品化や港湾への実装を実現していきます。
想定される技術開発テーマ
- ターミナルオペレーションの高度化に関する技術開発
- 荷役機械の高度化に関する技術開発
- ターミナル内のコンテナ輸送の高度化に関する技術開発
- 港湾労働者の安全性や作業効率の向上に関する技術開発
海外インフラ展開
新興国を中心とした世界の膨大なインフラ需要を積極的に取り込むことにより、我が国の経済成長につなげていくため、トップセールス等による積極的な売り込みや官民の情報交換等を通じ、官民一体となったインフラ海外展開に取り組んでいます。
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インドネシア・パティンバン港
提供:豊田通商 -
ベトナム・ラックフェン港
提供:伊藤忠商事 -
モザンピーク・ナカラ港
提供:五洋建設
海外港湾物流プロジェクト協議会
(2023年12月12日)

国土交通省では、今後も大きな需要が見込まれる海外港湾物流プロジェクトにおいて、官民による情報の共有・交換等の官民連携による海外展開に向けた取り組みを積極的に推進すべく「海外港湾物流プロジェクト協議会」を開催しています。
第12回会合では民間企業41社、関係機関9機関に参加いただきました。